【Member's Interview 第7回】運動が苦手な人も練習すればできますよ
- 齋藤由希さん(団体歴14年 カポエイラ・ヘジョナル・ジャパン東京本部指導者)
- 2015年8月10日
- 読了時間: 10分

【Member's Interview】では、カポエイラ・ヘジョナル・ジャパンのメンバーをご紹介しています。
第7回は、カポエイラ・ヘジョナル・ジャパンの指導者をご紹介します。丁寧な解説と細やかな心遣いで特に初級レベルの方から信頼感の厚い齋藤由希さんにお話を伺いました。
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◆◆◆カポエイラを始めたきっかけを教えていただけますか。
●齋藤由希さん(以下由希さん): 運動不足を解消したいな、とかダイエットしたいなと思ったのがきっかけです。
◆◆◆もともと格闘技好きだったとか、何かスポーツをされていたわけではないんですね。
●由希さん:中学3年間テニス部でしたが、高校1年の夏に美大受験のためにテニス部を辞めてからカポエイラを始めるまで、美術に力を入れていたので、ずっと文化系でしたね。
◆◆◆カポエイラは最初から江戸川区スポーツセンター(西葛西)で習っていたんでしょうか。
●由希さん:私は六本木のフィットネスクラブでのエクササイズクラスから始めました。その頃はフィットネスクラブで良さんが教えているクラスがあったんですよ。団体としての練習場所は江戸川区スポーツセンターと新宿にもクラスがありました。同じ頃に、フィットネスクラブで習っていた人達が、団体の練習に参加して戻ってくると、すごく上手になってくるのね。それを見て、私も本格的にカポエイラをやってみたいな、と思って正式なメンバーになりました
◆◆◆その時は、どのくらいメンバーがいましたか。
●由希さん:昇段式(バチザード)で黄緑帯(一番最初にもらう帯)が30人くらいいましたよ。でも昇段式が終わったら半分くらい来なくなっちゃったけどね(笑)
◆◆◆継続するのは、何でも難しいですからね…その頃はなぜカポエイラにそんなに人気があったんでしょうか。
●由希さん:ちょうどその頃は、他の団体もほとんどなかったし、カポエイラ自体も目新しかったということもあるかもしれないですね。それ以前は、マイナー過ぎたけれども、その頃になるとメディアにも取り上げられるようになってきて、一般の認知度も上がってきていたんでしょうね。
◆◆◆14年というキャリアはとても長いと思うのですが、途中で挫折しそうになったことはありませんか。今は指導者としても活動していらっしゃいますが、カポエイラを止めようと思ったことはありませんでしたか。

●由希さん:そうですね。長く続けていると、自分だけの問題ではなくて、周囲も変わってきます。それで方向性に迷ったことはありましたね。
◆◆◆「周囲が変わっていく」というのは、具体的に言うと、一緒に始めた仲間が辞めていく、とか、そういうことでしょうか。
●由希さん:それもあるし、よそのグループに移籍したり、自分でグループを立ち上げる人が出てきたり。そういう中で、他団体のワークショップやバチザドに参加したりすると、ああ、ここは楽しそうだなぁ、なんて隣の芝生が青く見えてしまう時期って言うのも、確かにありました。RODAに行ったり、ワークショップで今まで習ったことのない技を習うと面白いなー、もっと習いたいな、と思ったり。
◆◆◆それでも由希さんが他の団体に移らず、カポエイラを辞めずに続けてこられたのはどうしてでしょうか。
●由希さん:結局、どこにいても迷うことはあるだろうな、と思ったんですよ。他団体に移籍する人がたくさんいた時期もあったんだけど、その時に最終的に自分で出した結論が、どこか理想郷を他に探すよりも、ここを居心地よくすることを考えようかな、と。
◆◆◆それは一番王道な考え方だと思います。でも、それが自分にできるという自信も必要ですよね。
●由希さん:いえ。そこまで自信を持って「できる」と思っているわけではないんです。ただ、どこに行っても不満は生まれるだろうし、どこのグループにも良いところも悪いところもあるでしょうし。なんだかんだ言っても、このグループやカポエイラのスタイルが好きなんです。
◆◆◆なるほどです。ではこれまでカポエイラを続けてきて、大変だったなぁと思う出来事はありますか。
●由希さん:バチザド(昇段式)などの大きなイベントを企画運営する時に、メンバー内で意見がまとまらないことがあり、そうした場合に皆の意見を調整したりするのが大変だな、と感じることがありましたね。そのほかには、自分が指導者レベルの帯を取った、という状況に納得が出来るまでにかなり時間がかかりました。
◆◆◆バチザド(昇段式)は一年に一度のイベントなので、確かに運営は大変そうです。由希さんが指導者レベルの帯になった時のバチザドでは、その帯がサプライズだったと聞いた記憶があります。
●由希さん:ええ。自分では、まだまだ先のことだと思っていたのに、指導者の帯をもらってしまったんです。周囲から認められてのことだから、良いじゃないか、という意見もあるでしょうが、自分の中では覚悟が決まらないままだったので、取ってからも気持ちが落ち着くのに時間が必要でした。
◆◆◆いまは指導者としては何年目になりますか。
●由希さん:5年ですね。でもまだまだ自分では納得できない部分も多いので、もっともっと指導者としての実力をつけるように頑張るしかないな、と思っています。

◆◆◆由希さんは教え方が非常に丁寧で分かりやすいので、運動経験があまりなく、それでもカポエイラに挑戦してみたい、という初心者むけのクラスを担当していただけたらいいのにな、と個人的には思ったりしています。指導者的には、初心者に教えるのは退屈かもしれませんが。
●由希さん:そんなことはないですよ。基礎的な練習はどんなに帯が上がっても重要ですし、私は基礎練が好きですから(笑)
◆◆◆そういえば、他の先生たちから、「由希ちゃんは本当に努力の人だから尊敬する。コツコツと努力して、全然できなかった技もできるようになるまで頑張って練習するから彼女はスゴイんだよ」という評判を聞きました。
●由希さん:ありがとうございます。でも確かに、本当にカポエイラを始めた頃は全く何もできませんでしたからね…。
◆◆◆それが今の由希さんからは想像できないんですが。具体的には何が難しかったんでしょうか。動きが覚えられなかった、とか?
●由希さん:そうそう。動きのルーティンも覚えられなかったし、蹴りのバランスも取れなかったし…
◆◆◆それが少しづつできるようになってきたのは、どのくらい経ってからでしょうか。
●由希さん:動きのルーティンが覚えられるようになったのは2年目くらいだったかな。ただ青帯(準指導者クラス)を取る時にアルマーダ(回し蹴り)で変なクセがついていたので、それをリセットするのが大変でした。

◆◆◆「リセット」って、簡単にできるものでしょうか。
●由希さん:いいえ。かなり大変でした(笑)初心者の人が新しく覚えるよりも、時間がかかったと思いますよ。今まで覚えたことを消さなきゃいけないので、気持ちのリセットに一番時間がかかりました。
◆◆◆気持ちをリセットする、というのは具体的にどういうことでしょうか。
●由希さん:どうしても、これまでの知識に執着してしまうんですよね。でも、いままでの知識が全部間違っているということを認めて、新しく覚え直すというところがキツかったです。
◆◆◆それは具体的にどういう風にやるのでしょうか。とにかくたくさん蹴るとか、どんどん練習を重ねていく?
●由希さん:ただ蹴っていたら、いつもと変わらない蹴りになってしまうので、蹴る動作を細かく分解して本当にゆっくり、ゆっくり丁寧に動いて確認します。振り返る時の足をどこに置くか、身体をひねる時の足の入れ方、膝の入れ方はどうか、重心は、バランスは、という感じで細かくチェックしましたね。流れでばーっと蹴っちゃうと間違ったクセが出てしまうので、まずは、蹴る途中までの形がきれいに出来るようになるまでをやる、それから実際に蹴ってみて、正しく一人で蹴れるようになってきたら、今度は、対人で練習する、という流れでした。
◆◆◆かなり分析している感じですが、動画を撮ってチェックしたりされていたのでしょうか。
●由希さん:その時は動画は撮っていなかったですが、鏡の前で、通常のレッスンが終わった後に、注意されたところを意識しながら一人で練習していましたよ。もう少し練習したらチェックしてもらおうかな、と思っていたら、気づくと後ろに良さんがいて、ということも多かったですね。
◆◆◆どのくらい練習して、矯正できるまでにどのくらいの時間がかかったのでしょうか。
●由希さん:その時は週5で練習していたのですが、3~4カ月の間は自主練では、ほぼアルマーダだけしか蹴っていなかったですね。
◆◆◆週5回も練習していたんですか?
●由希さん:自主練も含めて、その頃はそうですね。普段のレッスンは月木だったんです。レッスンが終わった後に、練習場が閉まる時間まで鏡の前で一人で蹴りの練習をしてました。自主練は、水土日にやってましたが、ホントに、あの頃はカポエイラの練習ばかりしてましたね。
◆◆◆それだけ努力をしていれば周りの人が評価しないわけがないですね。由希さんにも苦手な技とかはあるのでしょうか。
●由希さん:もちろんありますよ。いまでもアクロバットは苦手なんです。
◆◆◆カポエイラでアクロバットはできないとダメなのでしょうか。人によって、カポエイラをする目的は様々で、特に男性はアクロバット的な動きに惹かれて始める人も多いでしょうが、女性はそうした人ばかりでもないと思うのですが。
●由希さん:必須とは限らないと思います。でもある程度のアクロバット的な動きはJOGO(1対1での動き)の中で自然にできると格好いいなとは思いますよね。教える立場で考えると、アクロバットを教えられない、というのは問題があると思うので、勉強が必要だなとは思います。
◆◆◆このあたりは今後の目標といった感じでしょうか。
●由希さん:そうですね。ある程度のアクロバットは自分で動けるようになって、説得力を持って人に教えられるレベルになりたいですね。でも本当は飛んだり跳ねたりするアクロバットよりも低い位置で移動するようなパワー技が好きなんですけど(笑)
◆◆◆ながく続けていて良かったなと思うことはありますか。
●由希さん:友だちがたくさんできたことかな。年齢、性別、国籍を超えた友だちがここまでできたのもカポエイラをやっていたからだと思います。
◆◆◆運動はあまり得意じゃないけど、ちょっとカポエイラを体験してみたいな、と思っている人にアドバイスはありますか。
●由希さん:やりたいと思ったら、誰でもできると思いますよ。
◆◆◆誰でもできる、はちょっと言い過ぎかも(笑)
●由希さん:そんなことないですよ。私だって、最初は側転もできませんでしたからね。1回ホレー(床に手をついて移動する避け技)すると、自分がどこにいるかも分からなくなるレベルでしたし(笑)だから、練習すれば、ある程度までは、練習すれば皆できるようになります。確かにYouTube動画で見るようなカポエイラの師範たちは、持って生まれたものが違うのかもしれないけれども、ただ、彼らに聞いたら、絶対に「死ぬほど練習した」って言うでしょうし。
◆◆◆死ぬほど練習…結局そこですか(笑)
●由希さん:でも、社会人だったら、お仕事もあるし、練習時間もたくさん確保するのは難しいかもしれない。そしたら週1回のレッスンでも、その人なりに頑張って練習して楽しめばいいと思いますよ。カポエイラは、相手に勝つ必要もないですしね。さっき、アクロバットが必要か?という話もあったけれども、やりたい人はやればいいし、やりたくない人はやらなくてもいい。アクロバットはカポエイラの魅力のひとつではあるけれども、それが全てではないから。それがなければカポエイラが成り立たないか?と言われたら違うでしょう?

◆◆◆おっしゃるとおりです。もっと他に大切なことがたくさんありますものね。
●由希さん:逆に言えば、楽器(バテリア)がなければ、カポエイラは成り立たないですからね。あとはコミュニケーション能力かなぁ。
◆◆◆コミュニケーション能力は、カポエイラに限らず、人生全般において重要ですね。最後に、由希さんが目標にしているカポエリスタがいたら教えていただけますか。
●由希さん:うちのメストレも目標にしている一人ですが、男性なので、ちょっと違う部分もあるんですよね。そういう意味では、女性だと、一番最初にブラジルに行ったときに出会ったカルンガさんが、私の中では今でも目標にしている一人ですね。
◆◆◆本日はありがとうございました。
取材日:2015年7月12日
取材/文責:芝崎正恵
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