【Member's Interview 第10回】楽しむ気持ちを育むのが継続の秘訣
- 大貫あすかさん(団体歴19年 カポエイラ・ヘジョナル・ジャパン 本部指導者)
- 2015年11月1日
- 読了時間: 10分

【Member's Interview】では、カポエイラ・ヘジョナル・ジャパンのメンバーをご紹介しています。
このインタビューシリーズVOL.1でご紹介したさやか先生の実妹で、東京本部や埼玉支部でもレッスン代行などでカポエイラを指導してくださる大貫あすか先生。女性らしい繊細さと明るさが魅力的で、生徒への的確なアドバイスとモチベーションをアップさせる励ましに、「頑張ろう!」と気持ちが前向きになる人も多い、人気の指導者です。
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◆◆◆カポエイラを始めたきっかけを教えていただけますか。
●大貫あすかさん(以下あすかさん):池袋のカルチャースクールで週に1回ハウスダンスを姉と一緒に習っていた時に、カポエイラの発表会があるから見に来ない?と誘われたのがきっかけです。それを見てから、団体に所属して習い始めました。
◆◆◆最初から、カポエイラに夢中になった、という感じですか。
●あすかさん:始めた当初はそうでもなかったんですよ。真面目に練習には通っていたけど、なかなか上達しなくて・・・本当に面白くなり始めたのは、ブラジルに行ってからかな。
◆◆◆ブラジルに行ったのはいつ頃ですか。
●あすかさん:1997~1998年頃ですね。カポエイラを始めて2年くらい経った頃です。
◆◆◆やはり本場で練習すると違うものでしょうか。
●あすかさん:そうですね。今とは時代も違いましたし。当時は、ビデオもなかったし、もちろんYouTubeのような動画もまだない時代です。インターネットも普及していませんから、カポエイラに関する情報や映像も手に入れることが難しかったんです。でも自分で積極的にブラジルに行きたかったか、というと、メンバーの皆が行くなら私も一緒に行こうかな、というノリでした。でも、行くなら一カ月くらいは行きたいな、という感じで3週間ブラジルに滞在したことから、色々な変化がありましたね。
◆◆◆その頃、一緒にブラジルに行ったメンバーは、もちろんお姉さんのさやかさんも含まれていると思いますが、どんな方たちでしたか。
●あすかさん:私の同期の人たちは、とにかくパワフルな人が多くて、楽しかったです。後藤さん(後藤良さん/現在はCRJ秋田支部代表)、竜太さん(須田竜太さん/現在はカポエイラテンポ日本支部代表)、正太郎さん(塩見正太郎さん/現在はカポエイラテンポ日本支部指導者)など、早く上手くなって教えられるようになるぞ、という気合いの入った人達ばかりでしたね。
◆◆◆その方たちと一緒にブラジルに行ったら、それは刺激的で楽しかったでしょうね。実際に、その時期にブラジルに行った人達は、さやかさんやあすかさんもそうですが、それぞれ指導者クラスにまで到達されています。ブラジルに行ってから、現在までカポエイラを続けられたのは、どうしてだと思われますか。
●あすかさん:やっぱりカポエイラを続けていると、友だちができるからじゃないかなぁ。私は姉(さやかさん)も一緒にカポエイラを習っていたという点でも続けやすかったと思います。

◆◆◆なるほど。本当に仲良し姉妹ですものね。
●あすかさん:年齢も近いので昔から友だちみたいでしたね。何年か前に姉が大きな病気をして手術をしたことがあったんです。その時から、彼女のレッスン代行を受け持つようになり、さらに距離が縮まったかもしれません。
◆◆◆私は、あすかさんの柔軟性があってアグレッシブでヘジョナウらしさがあるJOGOが好きなのです。あすかさんのスタイルを学びたいという女性もいるでしょうし、担当クラスがあったら、喜ぶ人も多いのではないかと思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。
●あすかさん:ありがとうございます。気持ちはあるのですが、なかなかお仕事との兼ね合いが難しいんです。現状ですと、決まった曜日と時間を担当するよりは、他の指導者のサポート役という立場が良いのかなと。自分の指導力にあまり自信がない、ということも一因ですけれど。
◆◆◆そうなんですね。
●あすかさん:はい。私は、指導することも「継続」が重要だと考えているんです。責任を持って継続して行う必要があるので、やるからには準備をしっかりして中途半端な気持ちで始めないようにしなければと。
◆◆◆なるほど。あすかさんは、教えるということをとても真剣に考えていらっしゃるということがよく分かりました。あすかさん、さやかさん、ゆきさん、この3人の女性指導者の協力体制やコンビネーションが本当に素晴らしいですし、三者三様の魅力があるので、状況が整ったら、ぜひあすかさんクラスも実現して欲しいと思います。
●あすかさん:そうですね。教えるということは自分も成長できることだと思うので、実現できるといいなと思います。
◆◆◆あすかさんが考えるカポエイラの魅力とは、どのようなものでしょうか。私はあすかさんの動きも好きなのですが、あすかさんの弾くビリンバウ(楽器)も、人を惹きつける力を感じます。聞いているとパワーをもらえる感じがするんです。
●あすかさん:そう言ってもらえるとうれしいです。でも、最初はビリンバウが嫌いだったんですよ。
◆◆◆それが変わったのはブラジルに行ってからですか。
●あすかさん:きっかけはそうかもしれません。ブラジルで友だちになった別の流派のカポエリスタに相談したことがあるんですよ。ビリンバウが上手くならない、練習が楽しくない、どうしたらいいのかな、と。楽しくない⇒練習しない⇒上手くならない⇒楽しくないという悪循環なんでしょうけど、弾き方のコツみたいなものがないのかな、って聞いてみたのね。そして、その時にビリンバウの正しい持ち方を教えてもらったの。その後、帰国してから、ビリンバウのワークショップに参加して、また色々と理解が深まったんです。そして、2006年にブラジルに行った時に、自分用にオリジナルのビリンバウを製作してもらいました。現在も愛用していますが、これが本当に気に入ったので、上手く弾きたい!という気持ちが強まって、一カ月間ずっと一人で練習していましたね。

◆◆◆確かに良い楽器を手に入れると違いますよね。練習する場所には困りませんでしたか。
●あすかさん:最初は恥ずかしかったけど、だんだんと慣れて近所の公園で練習したりしていましたね。やっぱり、急には上手くならないのよ。友人が言っていた言葉で、今も印象に残っているのが、「ビリンバウって、弾けるようになるまでが本当につまんないの。辛いし。楽しくないし。で も一度弾けるようになると、確実に順を追って上手くなるし、そうなると本当に楽しくなるから」と。その意味がやっと分かってきたかな、というところです。まず弾けるようにならないと、楽しくならないんだよね。そして、参加したビリンバウワークショップの先生が言っていて、同感だなと思った言葉も心に残っています。「みんな、個性が大事というけれど、基本無くしてアレンジなんてあり得ない」ということ。
◆◆◆確かにその通りですね。
●あすかさん:基礎の練習は、退屈で楽しくないかもしれないけれど、そこを通らないと楽しい体験もできないんですよ。それは、楽器に限らず、カポエイラの動きの練習もそうですよね。私も本当に基礎の練習が辛くて嫌いだったんです。辛い練習が嫌いで、好きな練習だけやりたいタイプなの(笑)
◆◆◆そうなんですか。それでも基礎の練習をコツコツ積み重ねてきたから、あすかさんは今、楽しめる状況にいるということですよね。
●あすかさん:そうですね。自分が上手くならないと、上手い人と一緒になっても十分に楽しめませんよね。自分が、この人いいなぁ、と思うカポエリスタと一緒に楽しく思い切りJOGOをしたかったら、自分もその人に見合うくらいの力が必要ですよね。私はそのために上手くなりたいのかもしれませんね。
◆◆◆これまでになにか苦手なことや課題はありましたか。
●あすかさん:始めて5年目くらいの青帯の時には「アルマーダを蹴るときに軸がぶれる」と指摘を受けて、フォームを修正しました。

◆◆◆それは通常のレッスンではないのですよね。
●あすかさん:そうですね。自主的な練習をしていました。同期の仲間に、フォームをチェックしてもらい、修正していました。それまで、先生にも言われていたんですが、なかなか本気が出なかったんです。でも本当に直そうと思ってやらない限り、こういうクセって絶対治らないものなんだなぁと、その時に思いました。
◆◆◆その他にもありますか。
●あすかさん:2006年にブラジルに行った時にはコンパッソのフォームを修正しました。未だにマルテーロは課題ですね。この基本の蹴りについて、いまだに師範から指摘されてしまうという点で、自分が指導者の立場になる、ということに自信が持ちにくいのかもしれないです。
◆◆◆指導者といっても、最初から完璧な人はいないと思いますけれども。
●あすかさん:確かにそうですよね。でもお手本を見せなくてはいけませんからね。教えることは、教えている人自身が上手くなることでもありますけど。教えるには集中力も必要ですし。
◆◆◆それはそれで、かなり高度な技術が必要な気がします。
●あすかさん:そうね。最初は難しいでしょうね。私は、今は楽器を楽しく弾けるようになったけれども、「楽しくない」「辛い」という人の気持ちもとてもよく分かるんです。苦手だな、と思っていた時からRODAでビリンバウを弾きながら歌わざるを得ない状況だったから。「私もJOGOに出たいのに、どうして誰もビリンバウを代わってくれないの?」とか、せっかく弾いているのにパウマ(手拍子)もなければ、コーロ(コーラス)も返ってこないから、「歌って!」とか「パウマ!」とか怒鳴っていたこともありました。
◆◆◆その状況はよく分かります。私も自分でビリンバウを弾いていて、パウマもコーロもないと本当に辛くてイヤになります。
●あすかさん:でもね、ある時に吹っ切れてJOGO中に怒鳴るのは止めたの。あの中で怒鳴っても伝わらないし、自分ひとりがイライラしていても何も解決しないと気づいたから。視点を変えて、自分が好きでビリンバウを弾いているんだし、歌っているんだから、そのRODAに参加している人を責めるのは止めたの。手が痛くなったり、喉が痛くても、自分に暗示をかけて、楽しいと思い込む(笑)
◆◆◆確かに辛そうにビリンバウを弾いている人からは、そういう雰囲気が伝わってしまうし、その雰囲気は確実にRODAに影響しますからね。
●あすかさん:確かにビリンバウを弾く人はRODAをまとめる指揮官だから、全体を引っ張っていかなければいけない。特に私たちの流派(ヘジョナル)だとビリンバウは1本だから、誰にも頼れない。でも最初から、皆を引っ張っていこう!と思っても、技術も伴わなくてはならないし、なかなか大変でしょう。だから、まず、最初の一歩は自分だけでも楽しむ気持ちを持つということが重要だと私は思っています。
◆◆◆これは、特に初心者の人には、心に響くアドバイスですね。
●あすかさん:他の指導者の人たちともよく話してたんだけど、RODAで怒鳴っている人や怒っている人の言うことを聞きたいと思う人なんていないよね、と。疲れたから代わって欲しいなぁ、イヤだなぁと思いながら弾いているビリンバウなんて、楽しそうじゃないし、誰も代わりたいと思わないでしょう。ビリンバウを弾いていて辛かったら、極端かもしれないけど、思い切って弾くのを止めてもいいのよ。だから、弾いている時は楽しいと思って弾く。それが大事だと気づいてから、ちょっと変わったかな。
◆◆◆色々と葛藤があったんですね。
●あすかさん:そうですね。長く続けていると色々な人を見てくるので、そこから学ぶことも多かったですよ。指導者クラスのメンバーは、ものすごく真剣にカポエイラに取り組んでいるけれども、全ての人が私たちと同じようにカポエイラに取り組みたいと考えているわけではないですから、そのあたりも考慮する必要がある、ということですね。ちょっとだけカポエイラを楽しみたい、という人達にも、私たちと同じレベルを要求するのは、なかなか難しいんですよ。
◆◆◆でも同じRODAに参加している人に、パウマやコーロの重要を理解していない人がたくさん混ざっていると、そのRODAは、もはやカポエイラのRODAではないですよね。
●あすかさん:残念ですが、そうなってしまいますね。でも、それは、そういうRODAも体験してみないと分からないことですから、練習段階としては必要なのかもしれませんね。

◆◆◆一体感のある良い雰囲気のRODAにするために必要なことは何でしょうか。
●あすかさん:そこに参加する人達が自分の役割を理解していて、積極的に場を良くしようときちんと働きかけができることでしょうね。そういう意味では埼玉メンバーは、一体感があって、いい雰囲気ですよね。
◆◆◆そうですね。大宮のレッスンは、皆があの場所で一緒に練習することが好きで、指導者の人が好きで集まっているメンバーなので、そういう雰囲気が作られていると思います。
●あすかさん:そういう雰囲気はカポエイラを学ぶには非常に良いですよね。
◆◆◆ありがとうございました。
取材日:2015年8月22日
取材/文責:芝崎正恵
カポエイラヘジョナルジャパン大宮・川口では、新メンバーを募集しています。
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