【Member's Interview 第12回】カポエイラで最愛の人に出会えました
- 波多野 慎吾さん(団体歴10年 カポエイラ・ヘジョナル・ジャパン 東京本部)
- 2015年12月19日
- 読了時間: 10分

【Member's Interview】では、カポエイラ・ヘジョナル・ジャパンのメンバーをご紹介しています。
東京本部で準指導者クラスの帯を持つ波多野慎吾さんにお話を伺いました。おひとりでブラジル本部で修行してから色々な変化があったそうです。
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◆◆◆カポエイラを始めたきっかけを教えていただけますか。
●波多野 慎吾さん(以下慎吾さん):以前、ダンスでヒップホップとハウスを習っていたのですが、その時に友人と行ったクラブでカポエイラのチラシを見つけたのがきっかけです。体験レッスンを受けて、すぐに団体に所属しました。
◆◆◆それは、「これだ!」と思ったからですか。
●慎吾さん:いや、暇だったから(笑)。
◆◆◆その当時はダンスを習っていたと先ほど聞きましたが・・・。
●慎吾さん:習っていたんだけど、ダンスも習い始めて10年くらい経っていて、ちょっとモチベーションが下がっていたんだよね。
◆◆◆ダンスも10年のキャリアがあるんですね。確か空手も習っていたと聞きました。
●慎吾さん:そうですね。空手も10年くらい続けていたかな。
◆◆◆空手とダンスは同時期に習っていたんですか。
●慎吾さん:時期は重なっていないですね。自分が空手を始めたのは6歳からだから。中学2年まで続けていました。でも、その頃にJR SKI SKIのZOOのテレビコマーシャルを見て、すごく格好良くて衝撃を受けて、それからは、すっかりダンスに方向転換してしまいましたね。18歳の時にニューヨークに1カ月くらいダンス留学をしたんですが、その頃がちょうど第一次カポエイラブームみたいな頃だったのかな。カポエイラジャポンの活動も知っていました。ただ、ものすごく筋肉質の人達が飛んだり跳ねたりしていて、ブレイクダンスっぽいなと思ったので、これは自分の好みとはちょっと違うなって感じてたんですよね。ニューヨークでもアンゴラセンターでジョアングランジのカポエイラを見たけど、これもちょっと自分には違うな、という感じだったんですよ。
◆◆◆なるほど。カポエイラには出会っていたけれども、その当時の慎吾さんの好みには合わなかった、ということですね。でも、もしニューヨークで見たカポエイラアンゴラに衝撃を受けていたら、別の団体でカポエイラをしていたかもしれないですね。
●慎吾さん:そうですね。当時、ダンスをしていた仲間でも、実際にダンスからカポエイラのアンゴラに移った人もいます。そうした経緯があったので、日本に戻って4~5年して、チラシを見たときに、近所でカポエイラの練習が受けられるなら、ダンスの幅を広げるために始めてみようかな、という気持ちになったのかもしれません。

◆◆◆「ダンスの幅を広げるため」という理由だったんですね。その理由が変わったのは、どのくらい経ってからでしょうか。
●慎吾さん:一年目くらいかな。カポエイラヘジョナウの練習を続けていると、「ダンス」と「格闘技」の要素が一体化しているところが、非常に自分にぴったりだなと感じることが多くなったんです。実際に、「空手」と「ダンス」をそれぞれ10年以上続けてきて、「カポエイラ」と出会って、「ああ、自分がやりたかったことは、これなんだな」「この競技だったら、自分が一番になれるかも知れない」と思ったんですよね。
◆◆◆その気持ちが生まれたから、10年間ずっとカポエイラを続けてこられた、という感じでしょうか。
●慎吾さん:そうですね。でも10年は、あっという間でしたよ。途中で、所属していた団体内で運営上の問題がおこったり、自分自身がケガをして練習ができなくなったり、色々なことがありましたが。
◆◆◆その中でも、これまで一番印象に残っていることを教えていただけますか。
●慎吾さん:2013年に一人で1ヶ月間ブラジルで過ごしたことが一番印象に残っています。すごく自分が変わったなと思います。
◆◆◆失礼ですが、確かに、私も慎吾さんは、ブラジルに行く前と後では、カポエイラの動きも考え方も大きく変化したし、雰囲気も柔らかく大人っぽくなったと感じました。
●慎吾さん:そうですね。最初は一人で行くのが怖くて、本当は一人では行きたくなかったんですよ。でも、帰ってきたら、一人で行って良かったなとすごく思いました。
◆◆◆一人でブラジルに行って修行すると決断することって、かなり勇気が必要ですよね。
●慎吾さん:そうですね。でも、自分ひとりの力ではなく、色々な人に助けていただけたからだと思うので、本当に皆に感謝しています。
◆◆◆ブラジルに行って、具体的にどんなことを感じられましたか。
●慎吾さん:ブラジルで見たカポエイラが日本とは全く違っていたことに衝撃を受けました。カポエリスタの姿勢や、環境や状況が日本とは全く違っていますから。

◆◆◆全く違う状況というと、具体的にはどのような感じなのでしょうか。
●慎吾さん:日本でカポエイラをしている人は楽しいから、という理由が多いと思います。でも、バイーアのカポエリスタは、カポエイラを通じて世界に飛び出したい、現状から抜け出したいというハングリー精神のようなものが非常に強いと感じました。意識のレベルがすごく高いな、と。
◆◆◆「意識のレベル」について、もう少し詳しく説明していただけないでしょうか。
●慎吾さん:カポエイラをやる目的とか、そういった意味での意識のレベルですね。「楽しいから」とか「健康のため」とかだけじゃないんです。「自分たちの文化を守っている」という意識も非常に強いと感じました。
◆◆◆それは、カポエイラのスタイルが異なっても共通なのでしょうか。カポエイラヘジョナウでもカポエイラアンゴラでも共通でしょうか?
●慎吾さん:自分はそう感じました。別の団体の師範ですが、以前にメストレヘネが言っていた言葉でとても印象に残っているものがあります。「私はカポエイラをするために生まれたのではない。送りこまれたのだ」(Eu não nasci para jogar capoeria, fui enviado.)自分はこの言葉から「私たちは無理矢理ブラジルに連れてこられて、ただ自分たちのアイデンティティを守るためにカポエイラをやっているんだ」というメッセージを感じました。
◆◆◆その他にも何かブラジルで感じたことはありますか。
●慎吾さん:自分が行った時はちょうどカーニバルの時期だったので、とにかく出会う人がみんな楽しかったですよ。カポエイラを続けていく楽しさは、やはり人との出会いだと思うんですよね。
◆◆◆これまでインタビューしてきた方は皆さんそう言いますね。カポエイラを始めていなかったら、絶対出会うことがなかったような人と、出会えたことが、とてもうれしい、と。本当に色々な人に出会って、価値観が変化したり、世界観が広がった、という意見も多く聞きました。慎吾さんのように、ブラジルまで行くと、日本国内だけでなく、世界にも広がりますよね。
●慎吾さん:そうですね。カポエイラは、世界中の人と繋がれる力があると本当に思います。言葉が通じなくても分かり合えるし、同じ歌を歌ってRODAを囲んだ人達は、仲間になれますよね。

◆◆◆ただ、気になる点がひとつあるんです。やはり、RODAも色々で、いつも良いRODAばかりに参加できるわけではないですよね。もし自分が、あまり良くないRODAに参加してるな、と気づいた場合、慎吾さんだったら、どうしますか。例えば他団体のRODAに参加している場合は、抜ければいいのかもしれませんが、自分が所属している団体のRODAであっても、ちょっと違う方向性に向かってしまっている場合もありますよね。上級者レベルになると、そうした場合にどのような対応をするべきなのでしょうか。
●慎吾さん:その質問はすごく難しいですね。良いRODAだったか、悪いRODAだったのかの判断は、色々なRODAに参加してみないと分からない部分も多いし。ただ、そのRODAを仕切っているメストレの力量が全てなんじゃないかなぁ。自分が印象に残っているのは2010年くらいに、メストレアコーディオンのワークショップに参加したんですが、その時のホジーニャ(小さなRODA)が非常に雰囲気が良かったんですよ。その時に思ったのは、楽器と歌がきれいでメロディアスだったらRODAも乱れないんだな、ということです。楽器が乱れたり、歌が怒鳴り声だったりするRODAは、雰囲気も荒れていますよ。
◆◆◆それは私も非常に納得感があります。
●慎吾さん:禁止されていたんですが、実はブラジルでストリートRODAに参加してみたりもしていました。その時にも、やはり仕切っているメストレの雰囲気がそのままRODAに出ているな、と感じました。自分がRODAに出たら「おまえ、RODAに出たんだからお金をよこせ」とか「酒をおごれ」とか言われたりしましたが、それはそれで貴重な体験だったと思います。
◆◆◆ストリートRODAは危険だし、そこでお金を払うのは良くないんですよね。
●慎吾さん:はい。確かに危険だし、良くないと思うので他の人には勧めません。でも自分は、危険だと言われるようなRODAでも良いRODAでも、どんなRODAでも自分が姿勢を正して、相手を尊重して、そのRODAを尊重して楽しい雰囲気を作ろうと思っているし、常に自分がそのRODAを盛り上げてやろう、という気持ちで参加しているので、ストリートRODAも経験値を上げるために出たいんですよ。
◆◆◆その意識の持ち方は非常に勉強になりま す。
●慎吾さん:一人一人の力は小さくても、それが集まることによってRODAのAxé(アシェ※本来の意味は斧ですが、ここでは神聖なエネルギーを意味します。カポエリスタは挨拶でよく使用します)を生み出すことになりますから。
◆◆◆それはよく分かるのですが、自分に力量がなかったり、自信がなかったりすると、自分がそのRODAの中で、何か盛り上げるということができない気がするのですが。
●慎吾さん:それは違います。誰でも、できることがありますよ。いいジョーゴをするだけじゃなくて、大きい声を出して楽しく歌うとか、手拍子(パウマ)を一生懸命やるとか、それだけでも本当にRODAの雰囲気は変わるでしょう?
◆◆◆確かにそうですね。このあたりは、カポエイラを始めたばかりの人にもしっかり伝えておきたいところですね。
●慎吾さん:本当にそうですね。
◆◆◆カポエイラを続けてきて、色々なことがあったと思うのですが、「これはちょっと・・・」というマイナス面として感じているところがあれば教えてください。
●慎吾さん:人との出会いがカポエイラの醍醐味でもあり、逆にマイナス面でもあるのかもしれないですね。たくさんの人と出会う中では人間関係がうまくいかない、ということも出てきますから。それでも自分は最愛の人と出会えたから、結局はプラスなのかな。
◆◆◆そういえば、ご結婚おめでとうございます。
●慎吾さん:ありがとうございます。彼女とはカポエイラをやっていなかったら、出会わなかったと思うから、今は本当に幸せですね。
◆◆◆慎吾さんの今後の目標を教えてください。
●慎吾さん:千葉でカポエイラを教えるクラスを持つことが自分の目標です。カポエイラを広めたいという気持ちがありますし、千葉には複数のカポエイラ団体があるので、グループの壁を越えて、みんなでRODAができるようになったら楽しいだろうなと考えています。

◆◆◆同じ地域にいくつか団体がある、ということですが、その中でも慎吾さんが他のカポエイラ指導者とは、どのように違うのかを知りたいです。慎吾さんのクラスでカポエイラを学ぶメリットなど、目指しているところはありますか。
●慎吾さん:そうですね。これまで自分がやってきたことを活かして指導していきたいと考えています。ダンス的な楽しい要素も入れられるし、アクロバシアをたくさん盛り込んだカポエイラもできるし、空手のようにルタ(格闘技)で強いカポエイラも教えられる。そんな教室ができたらいいなと考えています。
◆◆◆そういうカポエイラを習いたい方は慎吾さんのクラスに参加されるのがオススメということですね。
●慎吾さん:はい。がんばりたいです。
◆◆◆ありがとうございました。
取材日:2015年9月12日
取材/文責:芝崎正恵
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